海苔屋 神戸栄一郎の話-4

その先生の口から出たのは、緑芽という言葉だった。

私は、緑芽とはどんな「海苔」か? どこにあるのか?を質問した。

すると・・・


「その種を養殖している生産者を紹介しよう」

とのことである。


私の心は躍った。


書食時に先生は東北弁で各生産者と車座になって談笑していた。

日焼けした生産者の顔の中に、ニコニコした先生の顔は全く友だちの様な存在であった。

話を聞けば、生産者と共に海へ入り、腰まで海水につかって「海苔」の発育状況を調べたりするらしい。

実に熱意の溢れる研究者である。


数日後に手紙をもらった。

「只今は、入手できないので次の生産期まで待ってほしい」とのことであった。

私はじっとしていられなくなり、東京の先生の研究室まで押しかけた。

そして「海苔」の好きな者として、何とか旨い「海苔」を売りたいという気持ちを告げた。

先生は喜んで「協力する!」と言ってくれた。

つづく

榮屋海苔店

ひとつ、ひとつ手をかけ「美味しい」を届ける手づくり海苔店。 大阪の下町にある小さな海苔店です。 「紫菜(のり)」の本来の美味しさを届けたいという想いで、1948年に開業いたしました。