海苔屋 神戸栄一郎の話-2

一方すし屋さんにも一大改革が生じた。

以前は、巻きずしを巻く場合に一枚の「海苔」に三分の一ぐらいに小さく切った「海苔」を重ねて巻いたものであった。

これは一枚で巻くと中央部分が破れて、巻きずしを輪切りに切るときパンクするのである。

美しい巻きずしをつくるコツであった。

そのため一本の巻きずしを作るのに「海苔」が一枚と、三分の一ぐらいのあて「海苔」が必要でる。

すし屋さんにすれば手間がかかるし、「海苔」も多くいるのでこれを一枚で巻ける様な品質の「海苔」を要求したのだ。

その上、東京判と言って昔から東京湾や愛知、知多、伊勢湾等の「海苔」は、現在の「海苔」よりも縦も横幅も一センチ程小さく抄いたものであった。

これは、品質上大きく抄くと破れたり損傷が多くかった。貴重な経験から生れた大きさなのだ。

それを現在の大きさに統一し、単価を上げようとしたのだ。

従来味付海苔は、広島産の「海苔」が主体だったので、関西から西の産地では、味付海苔もいろいろな形態で市販され、需要もどんどん増え続けた。

そこで、今度は味付海苔の機械屋が「海苔」の大きさを統一出来れば、味付の機械も作りやすくなる!等々との希望もあって、昔の東京の小判がなくなり、現在の大きさの大判「海苔」が流通する様になったのだ。

成長の早い新品種「ナラワスサビノリ」は大判に抄いても、一枚で巻きずしが破れずに美しく巻ける「海苔」だった。

それは、「海苔」草が堅く、その上量産できる為に一枚の「海苔」の量を多くして、厚く抄くようにになった為なのだ。

つづく

榮屋海苔店

ひとつ、ひとつ手をかけ「美味しい」を届ける手づくり海苔店。 大阪の下町にある小さな海苔店です。 「紫菜(のり)」の本来の美味しさを届けたいという想いで、1948年に開業いたしました。