海苔屋 神戸英一郎の話-9
さてさて、極上品とはどんな「海苔」か見分ける方法をお教えいたしましょう。
1:その「海苔」が海から摘み取られた年・月・日、即ち「海苔」の生年月日を調べる。
2:摘み取られた場所、即ち生れ故郷を知ること。
上の二点を持って「旨い海苔」か否かが解る。
先ず1:の生年月日であるが、吾国は四季があり夏には太陽光が強くて日照時間が長く、冬は弱くて短い。
即ち六月二十二日頃の夏至と、十二月二十二日頃の冬至があり、従って海水を通して海に投入される太陽光の変化が「海苔」の生長に重大な関係がある。
「海苔」は、夏には無くなるため、秋から冬にかけて生長する。
この秋から冬にかけて、冬至の前後までの太陽光が生長に重大な関係がある。
即ち一日の昼間の短い冬至は、海水中に太陽光が投入される時間も短い時で、この頃の海水温度が海の中では春の季節の様な状態であるから、「海苔」は九月頃から、生長し十月中か遅くとも十一月初旬までに、海から採集したものが一番若い新芽である。
これを「秋芽海苔」と言って、柔らかで一番栄養豊富な「海苔」とされる。
これが十二月、一月、二月となると、段々日照時間が延びて、海水中の太陽光が長く投入され、水温も変化する。
この太陽光の投入時間が長くなると、葉体の一番外側のマンナクチクラというコンニャク質が堅くなり、口の中にいれた時に、トロケルようにならない。
口の中の三十五・六度の体温にトロケルような「海苔」は、「旨い海苔」の第一条件なのだ。
つづく
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